Web会議をスムーズに進行する13のコツ──「ミュート解除は見逃さない」「大きくうなずく」他

コラム

ハイブリッドワークに不可欠な要素の1つであるWeb会議。

しかし、全員がオフィスに集まって開催するオフラインの会議とは勝手は大きく異なります。そのため、やりづらさを感じやすいものです。

  • 「オフラインだったら、参加者からもう少し発言があった気がするのに」
  • 「とくにリモートの人が参加しづらそう」

そこでこの記事では、サイボウズ社内の事例も交えながら、Web会議をハイブリッドワークでも円滑に進めるポイントを13個ご紹介します。

初級編

「まず押さえていきたいポイント」として8点ご紹介します。すべてをいきなり実践する必要はありません。できそうなところから始めましょう。

資料や議題は事前にオンライン上で集めておく

会議で紙やホワイトボードを利用することは、リモートで参加するメンバーの参加しやすさを著しく妨げます。

「オフィスとリモートを分断するもと」と捉えて、資料や議題はデータやテキストで事前にオンライン上で集めるようにしましょう。

Web会議ツールには画面共有の機能もありますが、資料の内容を自分のペースで咀嚼したいシーンも多いはずです。そのため資料は事前に共有しておくと、参加者は会議の内容をより効率的に理解でき、意見も考えやすくなるでしょう。

サイボウズの場合は、グループウェアのスケジュール機能に資料データを添付したり、議題を事前にコメント機能で挙げたりしています。

スケジュール画面のスクリーンショット。会議の名前や日時、参加者名、資料データなどが表示されている
各会議の日時や参加者の情報に加えて、利用する資料データがオンライン上に集約されている

Web会議端末で複数人がまとめて参加するより、各々が自身の端末から参加するようにする

複数人がまとめてWeb会議に参加できる専用端末もあります。しかし可能であれば、参加者それぞれがご自身のPCやタブレット・スマートフォンからWeb会議に参加することをおすすめします。

Web会議専用の端末は、画面が大きい等のメリットはある一方、「オフィス組」と「リモート組」で分断しやすいリスクがあります。オフィスにいるメンバー同士の会話と、オフィス↔️リモート間の会話で、わずかながらもタイムラグや聞き取りやすさに差が生じるためです。

そのため、特別な理由がなければ、各参加者が自身の端末からWeb会議に参加することをおすすめします。

メンバーの「共感」も参考にしながら議題の優先度を決める

議題が多い場合には、議論の順序や優先度を決めることはよくあると思います。この際、会議の進行役やリーダーが独断だけで決定せず、メンバーの「共感」度も参考にしてみましょう。

「わたしもこれはとくに話したい」というメンバーの共感を参考にして、議題の優先度を設定するのです。そうすれば、会議への参加度合いも自ずと高まるはずです。

サイボウズ社内では、グループウェア上のスケジュールに紐づいたコメント欄や、kintoneでつくられた「議題管理アプリ」に挙がった議題に、ほかのメンバーが「いいね!」機能で議題への共感を示すようにしているチームがあります。

複数のメンバーが次々に議題を挙げ、それぞれにいいね数が表示されている
コメント欄には各メンバーが挙げた議題が並び、それぞれに「いいね!」の意思を示せる

意識的な相槌や、1.5〜2倍ほどのうなずきで「聞いているよ」という姿勢を表現する

Web会議の画面上では、オフライン会議より相手の反応を認識しづらいものです。そのため、参加者の発言があった際には、相槌をオフライン会議のとき以上に意識的に発するといいでしょう。

音声をミュートにしている場合は、オフライン会議のときより少しオーバーリアクション気味にうなずく形でも、ある程度の代用が可能です。オフライン会議の1.5〜2倍ほどを意識すると適切かと思います。

また、発言が終わった後にオフライン会議なら自然に起こっていた拍手も、Web会議では控えがちです。これも発言する人にとっては不安のタネになりかねません。

もし、ほかの参加者に音声的に迷惑がかからないかが気になって拍手できない場合は、音声はOFFのままで構いません。映像をONにして拍手(の動き)をするのがおすすめです。

視覚的に「拍手をしてくれている」とわかるだけでも、発言者にとっては一定の安心感につながります。

目線や表情をよく見て話を振る

参加者が映像ONで参加してくれている場合は、そこから得られる情報も積極的に活用しましょう。

たしかにオフライン会議のほうが、非言語情報は豊富かもしれません。しかし、画面越しの目線の動きや表情だけでも読み取れるものは意外とあるものです。Web会議は多くの場合は真正面からの映り方になります。そのため、目線の動きに関しては、オフライン会議よりも逆に認識しやすいことすらあります。

参加者の映像から読み取れるものがあったら、そこから話を振ってみましょう。たとえば、ミュートの状態で誰かの発言に笑っているらしい参加者を見つけたら、「◯◯さん、すごく笑われていますけど、どうしましたか?(笑)」などと話を振るのです。

すると、「わたしはなぜ笑っていたのか」を説明するところから、参加者は何かしらの発言を始めやすくなるでしょう。

また、こうした目線や表情の読み取りの結果から話を振ることで、「この会議の進行者はわたしをよく気にしてくれている」という信用や安心につながり、以後の発言も引き出しやすくなるかもしれません。

「そもそも盛り上がらない種類の議題」も存在すると認識する

Web会議では話が盛り上がらずにシーンとすると、オフライン会議以上に不安になりがちだと思います。

それが本当に「盛り上がるべきなのに、盛り上がっていない」のであれば、見直すべきこともあるかもしれません。しかし、「そもそも盛り上がらない種類の議題」もあると認識しておくことも大切です。

たとえば、報告・連絡は基本的には一方通行の議題です。逆に相談は双方向が前提となる議題です。

「あれ、なんだか盛り上がらないな」と感じたら、まずその議題はどういう性質のものなのか、見直してみましょう。

参加者のミュートON/OFF切り替えを見逃さない

参加者が「基本ミュートONで、発言したいときのみミュートを外す」という参加スタイルを取るようなら、ミュートのON/OFFの切り替え状態をよく見ておきましょう。

ミュートがOFFになったことに気づいたら「◯◯さん、何かありますか?」と積極的に発言を振ります。

これはオフライン会議における「何だか口を開こうとしている」「挙手しようとしている様子が伺える」といったサインと同等のものです。

Web会議でこれほど認識しやすいサインはなかなかないので、ぜひ見逃さないようにしたいところです。

議事録を残す

議事録を残すことは、欠席した人向けの情報共有や出席者向けの議論の確認材料として重要です。ハイブリッドワークにおいてはそれだけでなく、インターネットの通信状況や家庭の事情などで、完全には参加できなかった出席者向けへの補足としても有効です。

サイボウズでは、kintoneを使っての議事録の共有が多いです。

kintoneでの議事録アプリのスクリーンショット。画面左に議題や参加者など、右にコメントのやり取りが表示されている
kintoneでの議事録アプリの例。この日の欠席者への補足連絡が画面右のコメント欄で行われている

また、議事録のほとんどは社内で公開されています。

「隣のチームがどうやら◯◯について会議をしているらしい」という何となくの情報流通は、全社員がオフィスにいる場合には物理的に把握できることもありました。しかし、離れて働くハイブリッドワークではそのままでは起こり得ません。組織の縦割り化が進んでしまいます。

そのため、会議の参加者でなかった人が「あの話ってどうなったんだろう?」と気になったときに議事録を見にいけることは、ハイブリッドワークで組織の風通しを良くするために非常に有効です

公開して問題がない議事録は、ぜひ公開してみましょう。

上級編

ここからはさらに進んで、上級編のポイントを5つご紹介します。

テキストで事前に進められる議論は進めておく

口頭で話すまでもなく完結する議題は、意外とよくあるものです。また、そこまででなくとも、テキストで一部は事前に議論しておけるような議題もあることでしょう。

会議をより充実したものにするために、テキストで議論できる部分は、事前に議論を進めておきましょう。

たとえばサイボウズでは、グループウェアの会議予定のコメント欄で、議題を挙げた流れから事前のディスカッションが進むことがあります。

議題をある社員が挙げたのち、そこから複数人がコメントを返信している
議題をコメントで挙げた流れで、ディスカッションが進んでいる様子

あるいは、kintoneのスレッド(掲示板)機能を使って、テキストで議論できるところまで議論したのち、その内容が会議に持ち込まれて口頭での議論に続くことも少なくありません。

最近は、経営レベルの意思決定においては「助言収集アプリ」というkintoneアプリも用いています。現場メンバーからの意見をテキストで収集したのち、それを参照しながら経営会議にて経営陣が意思決定する、という運用を取っています。

kintoneでの「助言収集アプリ」。ある議題に関する現場のメンバーのコメントが集まっている。経営会議ではこれをもとに議論される

会議中もテキストで発言することも大歓迎と伝える

オフライン会議と比べたときのWeb会議の特長に「コメント機能」があります。この活用をぜひ積極的に歓迎しましょう。

「口頭での発言が苦手な人が発言しやすくなる」という点も効果的ですが、それだけではありません。

オフライン会議では口頭での発言が得意だった人ですら、Web会議になるとタイムラグなどが原因で発言しづらくなることがあります。こうしたことの対処にも有効でしょう。

発言の手段が増えることは、原則だれにとっても悪いことではありません。これをまずはチームの共通認識としましょう。

リアクション機能や挙手機能などを活用するのもおすすめです。

サイボウズではそれらの機能の活用だけでなく、kintoneを用いた「実況スレ」という文化も盛んです。会議の状況やそれに対する意見・感想・補足などを、社内公開されたスレッド上にリアルタイムで書き込んでいく文化です。

実況スレの例。「スキルマップ」に関する議題の最中に、複数のメンバーが情報や連絡を共有している

Web会議内のチャット機能とは異なり、会議が終わった後でもやり取りをそのまま続けることができます。そのため、会議中には拾いきれなかった質問や意見などに会議後も返信があり、場合によってはディスカッションが続くこともあります

これも「テキストで発言していいんだ」「テキストでも発言するといいことある」という参加者の前向きな気持ちに貢献するでしょう。

また、やり取りは社内公開されているため、「会議には参加していないけど、その議題には詳しい/関心がある」と言ったメンバーの力を借りやすいのも、実況スレの特長の1つです。

なお、社内公開ゆえに書き込むことに緊張するメンバーもいるようですが、最近は実況スレの冒頭に「すごい!といった簡単な一言をむしろ歓迎します」と記載することで、ハードルを下げる取り組みも行われています。

実況スレのスクリーンショット。「すごい!とかの一言をむしろ歓迎します」と記されている
とある実況スレの冒頭に、簡単なコメントの投稿を歓迎する旨が記されている

コメントがあれば適宜拾って読み上げる

「テキストでの発言も大歓迎」と伝えても、最初はせいぜい恐る恐る書いてもらえるくらいがほとんどでしょう。

そのため、参加者がそんななかでもテキストでの発言にチャレンジしてくれた際には、会議の進行者は必ず拾い上げて、読み上げることをおすすめします。お便りを読み上げるラジオのパーソナリティーをイメージするといいです。

読み上げたあとは「ようするに◯◯ということでしょうか?」「何か補足はありますか?」などの言葉で、追加の発言を促すのも効果的です。

勇気を持ってテキストで発言したら、読み上げてもらえて、口頭での発言の機会も与えられた……こうした体験を何度か経験することで、参加者の発言のハードルは下がりやすくなります。

「発言時以外もミュートしなくていい」と呼びかける

Web会議ならではの機能の1つに「ミュート」があります。便利な機能ですが「必ずしも使わなくていい、むしろ可能であればミュートはOFFのままを推奨」と呼びかけるのも、シーンによっては効果的です。

ミュート機能は、多くの場合「発言者の邪魔をしてしまわないように」という親切心から使われると思います。しかしこのとき、円滑な会話に重要な「相槌」という要素も完全に削ぎ落とされてしまうデメリットがあります

自分の発言に対しての他人の相槌が、音声で確認できるかできないかで、話しやすさや安心が大きく違った経験はないでしょうか? だからこそ、ミュートOFF推奨の呼びかけが有効なシーンがあるのです。

使用するWeb会議ツールや、Web会議に参加する環境にもよるかもしれませんが、最近のWeb会議ツールのノイズキャンセリング機能は優秀です。

そのため、ミュート機能を使わずとも「不要な音声は正しくカットしつつ、相槌などの”あるべき音声”はしっかり拾われる」という絶妙な状態にできることも少なくありません。

オフライン会議のような"自然なガヤガヤ"を再現して、場の安心感を醸成するためにも、とくに少人数の会議の場合はこうした呼びかけを試すといいでしょう。

オフライン会議後によくあった「ポツリと漏らした感想からの延長戦」を分報で再現する

オフラインでの会議の後には「さっきの会議で出たあの件ですが、そういえば……」と延長戦のような会話が起こることも多かったように思います。会議中には出なかったいいアイデアがこうした場で出ることも、意外と少なくありませんでした。

働く場所が離れると、こうした延長戦はそのままでは起こりづらいものです。

サイボウズでは最近、会議後に「分報」に会議の感想が書き込まれることがあります。そこからまさに延長戦のような形で、議論がさらに進むこともあります。

ある社員がSNSのように状況や会議の感想をつぶやき、別の社員がそれに対してコメントを返信している
分報の例。いまの状況や会議の感想をつぶやくと、そこからやり取りが発生することがある

分報は社内SNSのような仕組みです。いまの仕事の状況や気持ちを自由形式で随時書き込んでいきます。

この分報を活用すると、こうしたオフライン会議にあった「会議の延長戦」も再現することが可能です。

終わりに

このように、ハイブリッドワークにおいてWeb会議をうまく進行するポイントには、「振る舞い方」といったソフト面と「ツールの活用」といったハード面の両方があります。

オフライン時代とは違った振る舞いのポイントを押さえつつ、オンラインならではのツールや機能を活用する——こうすることでオフラインの会議にも匹敵する、あるいはそれ以上のWeb会議を実現することも可能なはずです。

ハイブリッドワークにおけるWeb会議をより円滑にする参考にしていただければと思います。

執筆:吉原 寿樹(サイボウズ)

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