成功条件05
ハイブリッドワークだからこそ、見えない意思決定が社員を苦しめる
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成功条件 04
新型コロナウイルス感染症の影響でテレワークが広く普及するなか、仕事仲間と雑談する機会がなくなったという方も少なくないのではないでしょうか。ハイブリッドワークによってオフィスに出社する機会があれば、普段のテレワークでたまったうっ憤を晴らすかのように、雑談が止まらないなんて方もいるはずです。
もちろん雑談しなくても仕事はできますが、不安や孤独、寂しさを感じることもあることでしょう。実際に雑談が生産性を高めることに役立つという調査結果もあるほどです。
ときには仕事の話題も大いに出てきやすい雑談。そんな雑談の頻度がオフィスで働くメンバーとテレワークで働くメンバーで差が付いたり、あるいはオフィスにいるメンバーとテレワークのメンバー間での雑談が減ってしまったりすると、社内でやり取りされていた有益な情報は減るばかり。情報格差も起こることでしょう。
こうしたことによって、生産性が下がったり、これまでのような良好な関係性が壊れてしまったり、なんて事態は避けたいところです。
雑談不足による問題点について見ていきながら、ハイブリッドワークでも組織を強くするためには、どのように雑談できる場をつくっていけばいいのかを考えてみましょう。
オフィスに出社すれば、プライベートの話はもちろん、上司の愚痴も含めて雑談するチャンスはたくさんあります。出社のタイミングや休憩時に立ち寄った休憩スペース、お昼どき、取引先への移動中などなど…。
一方で、テレワークに移行してから、雑談する機会はどうでしょうか。メンバーが目の前にいるオフィスに比べて、雑談するタイミングは減っていることでしょう。株式会社イーヤスが実施した「人事担当者の社員の健康管理に関するアンケート調査」によると、出社時に比べて「会話」や「雑談」をする時間が減ったと答えたのは70.9%に達していることが分かりました。
出典:「雑談が足りない」7割 テレワークで働く会社員|ITmedia ビジネスオンライン
雑談が仕事に与える影響について調査した、一般社団法人日本能率協会が調査した「職場メンバーとの雑談機会と効果」によると、雑談があることは自分にとってプラスであると回答した人が全体の8割に達していると発表しています。
また雑談があることで生産性を高めることにつながっていると全体の6割ほどが回答しており、業務の創造性を高めることにつながっていると回答した人も全体の6割以上に達していました。
出典:2021年「ビジネスパーソン1000人調査」【雑談機会と効果】|オフィスのミカタ
雑談そのものが生産性や創造性に影響を与えると考えている人は多いことから、ハイブリッドワークにおいても雑談が気軽にできる状況を用意することが重要でしょう。確かに、雑談によって気分が上向くというプラスの面と、気が散ってしまうというマイナスの面があるのはイメージできます。
ただし、多く雑談した日はポジティブな気分になり、多少無理をしてもメンバーの助けになりたいという気持ちが強くなったという経営学者らの調査もあるほどです。
参考:リモートワークでも雑談できる仕組みが必要だ|DIAMOND ハーバード・ビジネス・レビュー
また、雑談のなかで仕事や取引先などに関する情報もやり取りされることもあり、オフィスとテレワークにおいて雑談の機会に差がでてくることで、情報格差が生まれてしまうこともあるでしょう。
ハイブリッドワークを成功させるためには、全員がオフィスにいたときに何気なく行っていた雑談の場をオンラインでうまく作ることが大切になってくるのです。
では、ハイブリッドワークにおいて雑談する機会をどのように作っていけばよいのでしょうか。それには2つのアプローチが考えられます。
1つが「雑談の場をつくる」というストレートな方法。そしてもう1つが、「宛先なく情報発信できる場をつくる」方法です。
これは、オフィスで行われる何気ない雑談のように、仕事の話やプライベートの話などどんなことでも語っていい場をつくってあげることです。
たとえばサイボウズでは、1対1で行う「ザツダン」や、部署の垣根を越えて雑談できるイベントの場をセッティングしています。
「ザツダン」は、通常のミーティングとは異なる目的をもっています。
通常のミーティングと同様に、結果的にはメンバーが抱えている問題を解決する場になることもありますが、最大の目的は「コミュニケーション量を増やすこと」であることが特徴です。
ザツダンを日頃から行っていることで、「仕事の悩みを気軽に共有できる(一人で悩まずに済む)」「心理的な負荷を早めに取り除ける」「業務をよりよく進めるためのアドバイスが手軽に得られる」「定期的なコミュニケーションによって人間関係が円滑になる」といった声が寄せられています。
多くの場合は、上司と部下で週に1度行われていますが、人や場合によっては、それ以外の組み合わせ・頻度で行われていることもあります。
サイボウズでは、社内でさまざまなつながりができるように支援するコミュニケーション促進チームがあり、このチームが主催したイベントが定期的に開催されています。
たとえば、入社したてのメンバーを中心とした全社向けの自己紹介イベントや社内でよく使うツールの勉強会、テーマを決めた雑談会などを、部署を越えたランダムな組み合わせで開催しています。部署を越えたつながりをつくるためのコミュニケーションの場づくりとして、さまざまなテーマで企画されています。
その結果、半年の間に開催された23回のイベントによって、これまでつながりのなかったメンバー同士が通知し合う(相互にメンションする)関係が新たに161組生まれています。特定のテーマをきっかけに雑談を踏まえたコミュニケーション量を増やすことで、部署を越えた新たなつながりができたのです。
「あー、目が疲れた…」とボソッとつぶやくと、「あ、よく効く目薬知ってますよ」「ブルーライトカットのメガネって効果あるんですかね」なんて周りから声がかかり、そこから話が脱線していく、なんて経験はあるでしょう。
フリースペースや食堂、エレベーター内でもきっかけさえあれば自然と始まるケースもあり、他部署も含めてメンバーが固定されている訳ではない。そんな「誰かに向けた訳でもない、なんとなく発言した一言から広がっていく」これこそが雑談らしさではないでしょうか。
ハイブリッドワークにおいてそんな雑談が生まれやすい状況をつくるためには、どうすればよいでしょうか。多くの会社では社内のコミュニケーション手段としてメールを使われていますが、雑談はメールでは難しいでしょう。なぜなら、メールは特定の宛先を指定してやり取りする必要があるからです。
そこで役立つのが、宛先を決めずに何気ない一言がつぶやけるSNSのような仕組みです。
たとえば普段プライベートで利用しているFacebookやTwitterのようなSNSを思い出してください。SNSをのぞくだけで、自分に宛てて送られた訳でもない、普段なかなか会わない仲間の近況を知れたり、そのなかで気になるものがあれば、そこからコメントで話が盛り上がったり……そんな経験はありませんか?
これを社内でも実現することで、離れて働くチームにも雑談を生み出すことが可能です。サイボウズでは、たくさんの雑談が生まれる場として「分報」「実況」という仕組みを運用しています。
分報は、1日の業務内容を報告する日報と違って、今取り組んでいる仕事の状況やそのときの気分といった「何気ないひと言」をつぶやくものです。
「今から提案書、頑張ります」
「先日公開したサイト、感想が知りたいなぁ、誰かコメントよろ」
「暑い、オフィスに扇風機欲しい」
「さっき食べたカレー、まだヒリヒリしてるw」
といった書き込みです。まさに社内Twitterのように使われているのが分報です。
仕事に関連したつぶやきはもちろん、今の気持ちや最近気になっていること、自身がはまっている趣味など、特に条件なくつぶやけます。
仕事に関連したものであれば、そこからいいアイデアや情報、アドバイスを共有してもらえることもあるでしょうし、プライベートのことであれば同じような気持ちを持った人や同じような境遇、まったく立場が異なる人など、いろいろな人からの情報が寄せられ、それがチームの一体感を高めることにつながることもあるでしょう。
実況は、会議や勉強会、イベントなどが開催されたときに、その内容についての感想や疑問点などを1つの場所に書き込んでいく仕組みです。
オンラインの会議やイベントでは、一部の人に発言が偏ってしまったり、一方通行になってしまったりするケースも少なくありません。口頭以外に発言する手段があれば、参加者同士でコミュニケーションが広がり、そこから議論が深まるだけでなく、次回のテーマなどが見つかることも。そこから新たな関係性が生まれ、メンバー間の相互理解につながることだってあるでしょう。
なお、雑談によって「業務への集中力低下につながるのでは」といった懸念を持たれる方もいることでしょう。
確かに雑談は、必ずしなければいけないというものではありませんし、もしチームやメンバーのために悪い影響が出るのであれば、最小限の業務状況だけを共有することでも構いません。サイボウズ社内でも、共有する頻度は人それぞれです。
また、自分が集中したいときに他人のつぶやきが見えてしまって集中できなくなってしまうのであれば、フォローを外して自分のタイムラインに情報が流れてこないようにするなど、通常のSNSと同様に最小限の情報だけ拾い上げていくことも可能です。
集中力低下を回避する意味でも、ツールが持つ機能をうまく活用したいところです。