出社組とテレワーク組の分断をなくせ──ハイブリッドワークだからこそ意識したい3つのマネジメント原則

コラム

テレワークとオフィスワークを自由に選択できる「ハイブリッドワーク」を取り入れる企業が増えています。

柔軟な働き方ができるハイブリッドワークのおかげで、家庭の事情なども考慮しながら働けるようになるなど、メンバーからは喜びの声も寄せられていることでしょう。しかし、チーム全体をまとめていく立場のマネジャーは、手放しには喜べない事情もあります。

  • バラバラの場所で働いてもチームの生産性を下げずに仕事ができるのか
  • いつでも相談できる距離にいないメンバーが抱える課題をうまくフォローできるのか
  • お互いの状況が見えないなかで心身に不調をきしているメンバーがいないか

そんなハイブリッドワークならではの課題について考えていきながら、その解決策となるヒントをお伝えします。

ハイブリッドワークにおける生産性向上の鍵は“情報格差”の解消にある

柔軟な働き方ができるハイブリッドワークになったことで、多くのメリットが得られている半面、「業務効率が落ちた」「生産性が上がらない」と感じている方もいるかもしれません。その原因として、テレワーク組とオフィス組との間で、場所による情報格差が生じていることが考えられます。

一般的にオフィスのなかでは、会議室で行われる打ち合わせやフリースペースでの会話はもちろん、紙で配布された会議資料の回覧、隣にいるメンバーなどとかわす雑談など至る所で情報が共有されています。一方でテレワークでは、電話やEメール、ウェブ会議などでのコミュニケーションが中心となり、自分の業務に直接関わる情報しか中々入ってこないという方も多いのではないでしょうか。

このようにハイブリッドワークにおいては、知らず知らずのうちに、オフィスワークとテレワークのあいだで情報格差が発生しているケースが少なくないのです。

一般的にマネジャーには、報告・連絡・相談(ホウレンソウ)が多く寄せられるものですが、これはハイブリッドワークでも同様です。人によって知っている情報が異なっていれば、生産性のばらつきが出てしまうのは当然。逆に言えば、この情報格差を解消してあげることで、ハイブリッドワークにおいてもメンバー全体の生産性を高めていける可能性を秘めています。

だからこそ、テレワークとオフィスワークで情報格差が生まれていることをしっかりと自覚したうえで、その対策を講じることが大切なのです。チームに情報格差が生まれないよう、情報が自然に流通していく仕組みを整えていくことこそが、ハイブリッドワークをうまく機能させるための第一歩と言えます。

業務を徹底的にオンライン化する「オンラインファースト」を実践すべし

メンバー全員が同じ情報に触れる機会を増やすためには、仕事におけるあらゆるやり取りをオンライン化していくことから始めたいところです。物理オフィスを業務の起点にするのではなく、オンライン上にある仮想オフィスを業務の起点にする、いわば“オンラインファースト”の実践です。

物理的なオフィスからオンライン上の仮想オフィスに移行する

オフィスの会議室で行われていたミーティングは、原則ウェブ会議に移行することで、会議室に集まれないメンバーも自宅から会議に参加できるようになります。また、紙の資料は廃止し、オンライン上で全ての資料が閲覧、共有できるようなルールづくりも必要でしょう。

口頭でのやり取りも、議事録を作成してオンライン上で共有できるようにするなど、オンラインファーストで業務フローを見直してあげることで、テレワークにおいても生産性を高めながら業務を推進できるはずです。

一方で、出社を前提に働いているメンバーからは「テレワーク組のために口頭のやり取りも全て記録しないといけないなんて」と不満の声も聞こえてきそうです。そんなときには、根気よくオンライン化する意義をメンバーに伝えていくことが大切です。

自身の体調不良や家族の事情など、やむを得ない事情で出社できないこともあるはずです。そんな状況のとき他のメンバーに急な対応を依頼する際にも情報が引き継ぎやすくなるなど、情報共有の負担が軽くなることは誰にとってもありがたいと言えるでしょう。

また、過去の情報がまとめて管理、閲覧できるようになると、普段のオフィスワークにおいてもメリットがあります。情報をオンライン化する負担は多少感じるかもしれませんが、それ以上にオフィスワークにもたらすメリットも多くあるのだと伝えていくことで、チーム全体で円滑な情報共有が可能になるでしょう。

“途中経過”を見えるようにすることがメンバーの不安解消に効果的

普段からメンバーをマネジメントしているマネジャーは、メンバーが抱えている不安をうまく理解し、解消してあげることが大切な役割の1つです。当然ハイブリッドワークにおいても、働いているメンバーの様子から抱えている悩みなどを感じ取り、何かあればうまくフォローしてあげたいところです。

ただし、遠目であってもメンバーの様子が何となく分かるオフィスとは違い、直接姿が見えないテレワークでは難しいこともあることでしょう。

このように“見えないこと”に不安を感じているのは、何もマネジャーだけではありません。メンバーでも同じような不安を抱えているのです。パーソル総合研究所が公開している「第三回・新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査」では、周りが見えない、周りに見てもらえないことによる不安を感じている人が多いことがわかってきています。

リモートワークを行うことで、齟齬が生じやすい、様子や感情を読みきれない、などの問題を感じていることがわかるグラフ。詳しくは出典先を参照

出典:新型コロナウイルス対策によるテレワークへの影響に関する緊急調査|パーソル総合研究所

テレワークにおける不安の1つである「周りが見えない、見てもらえない」ことの本質は、単に一緒に働くメンバーや上司の姿が物理的に見えるかどうかではありません。

周囲がどんな仕事を進めていて、今どんな状況にあるのかが“把握できないない”ことであり、自分がやっていることがズレていないか、きちんと評価してもらえるかどうか“”という不安の表れです。

オフィスにいれば、声をかける相手が電話中なら後から声をかけようと考えるでしょうし、顧客から寄せられたクレーム対応の電話を終えたメンバーには「さっきのお客さんだけど、今度電話があれば俺に代わってもらっていいから」といった、何気ない声掛けもできるでしょう。

しかし、テレワークでは目の前で電話している様子は見えないため、いつ声をかけたらいいのか、どんなアドバイスをしていいのかが難しいものです。これはメンバーにとっても同様で、マネジャーが今何をしているのか分からず、相談するタイミングを逸してしまうなんてことも起こり得るのです。

全ての情報をオープンに、結果だけでなく途中経過も見える環境を用意したい

では、どのようにすれば見えない不安を解消することができるのでしょうか。ハイブリッドワークにおいて周囲の様子や動きを分かるようにするためには、オンライン上でメンバーが置かれている状況や途中経過などがきちんと共有できるようにすることが大切です。

オンライン上で途中経過が見えてくれば、「いま進めてもらっている提案書だけど、こんな視点の話を入れたら更によくなりそう」「さっきお客さんとのやり取りに関して書かれていた議事録見たけど、もっとこの機能を提案したらいいんじゃない?」といったコメントをマネジャーとしてできます。

メンバーにとっても自分の仕事を見てもらえて、指示がもらえていることで不安解消にもなるはずです。

kintone上でマネジャーが、メンバーの途中経過をみてコメントを残す様子
kintone上でマネジャーが、メンバーの途中経過をみてコメントを残す様子

そんな環境をつくるには、働いている状況を、途中経過も含めて共有できる透明性の高いコミュニケーションツールを活用しましょう。透明性が高いツールであれば、たとえ離れた場所であっても、あたかも同じ空間にいるかのようにメンバーの様子を感じることができます。

サイボウズでは、自分が担当する仕事以外の情報もオープンになっています。自分が担当していない仕事の状況や案件ごとの進捗が全てオンライン上で見えるようになれば、「周りが見えない、見てもらえない」ことで生まれるメンバーの不安を軽減する効果が期待できます。

サイボウズのkintoneでは、テーマごとにスレッドを立ててやりとりがされており、それぞれの途中経過や議論も見えるようになっている
サイボウズのkintoneでは、テーマごとにスレッドを立ててやりとりがされており、それぞれの途中経過や議論も見えるようになっている

また議論の途中経過が見える化できるようになれば、「そんな話聞いてなかった」「そんな結論になった理由が分からない」なんて声も少なくなるでしょう。オンラインで起こりがちな”決定事項だけが降ってきた感覚”も軽くなり、メンバーの納得感も高まるはずです。

その他にも、全ての情報がオンライン上に共有されることで、後から入ってきたメンバーに情報をキャッチアップしてもらいやすくなることも大きなメリットと言えるでしょう。

ハイブリッドワークで強いチームを作る“雑談”の重要性

ハイブリッドワークで失われがちな、もう一つの重要なコミュニケーションとして「雑談」が挙げられます。

オフィスであればたたずまいや顔色はもちろん、日常的な雑談のなかからメンバーの様子を知ることで、良好な関係づくりに向けたマネジメントも可能でしょう。ハイブリッドワークでも同様に、メンバーの様子を見ながらマネジメントしていくことは大切です。ただし、テレワークなど目の前にいないメンバーの心理状況を理解し、その様子から体調を察するようなことは難しいはずです。

オンライン上でカメラをつなぎっぱなしにしてオフィスと自宅の様子を共有するといったマネジメントのやり方も考えられますが、監視されていると感じてしまうことで、かえって生産性を低下させてしまうことも。

オンライン上で1対1のミーティングを行ってその都度メンバーの状態を知ることはもちろんやるべきですが、日々のちょっとした変化に気づきにくい面もあります。

実は雑談が仕事に与える影響について調査したデータもあります。一般社団法人日本能率協会が調査した「職場メンバーとの雑談機会と効果」によると、雑談があることは自分にとってプラスであると回答した人が全体の8割に達していると発表しています。

また雑談が生産性を高めることにつながっていると全体の6割ほどが回答しており、業務の創造性を高めることにつながっていると回答した人も全体の6割以上に達していました。

職場で雑談があることは自分にとってプラスになると回答している人が8割に達していることがわかるグラフ。詳しくは出典先を参照

出典:2021年「ビジネスパーソン1000人調査」【雑談機会と効果】|オフィスのミカタ

もちろん雑談しなくても仕事はできますが、メンバーの心理状態を知ったりテレワークにおける孤独や不安を解消したりするためには、雑談は重要なものとなってくるのです。

サイボウズ流1on1「ザツダン」の目的はコミュニケーション量を増やすこと

そこでサイボウズのマネジャーが大事にしているのが、サイボウズ流1on1ミーティング「ザツダン」です。ザツダンはその名の通り「雑談」でよく、仕事の話はもちろん、昨晩見たドラマの話題や今日のランチについてなど、なんでも話していいミーティングです。

一般的な1on1は、メンバーの悩みを解決し、成長を支援するもので、コーチングやカウンセリング、ティーチングなどの中間的な位置づけです。一方、サイボウズのザツダンは、「メンバーの成長を促す」ことが中心ではなく、コミュニケーションの量を増やし、メンバーの状況を知ることを大きな目的にしています。

一般的に、時間を設けて上司と部下で週に1度30分ほど“ザツダン”を行っていますが、人や場合によって、それ以外の組み合わせや頻度はさまざまです。

一般的な1on1と比較した際の、サイボウ流1on1ザツダンの位置づけを示した図

出典:サイボウズ流1on1ミーティング「ザツダン」とは?

こうした“ザツダン”の機会を設けたことで、「一人で悩まず、仕事の悩みが気軽に打ち明けられる」「一人で仕事をすることでの心理的な負荷を早めに取り除くことができる」「業務をよりよく進めるためのアドバイスが手軽に得られる」「定期的なコミュニケーションによって人間関係が円滑になる」といったメンバーの声が寄せられるようになりました。

業務に直接関係のない話も含めて、ウェブ会議ツールを使って意識的に雑談する機会をセッティングしてあげることも、ハイブリッドワークでメンバーの不安を取り除いてあげることに役立つでしょう。



コミュニケーションのきっかけになる社内版Twitterも強いチームづくりに欠かせない

しかし、いきなり「ザツダンをしよう」となっても、お互いに何を話せばいいか分からず、困ってしまうマネジャーやメンバーも多いのではないでしょうか。サイボウズでは、ちょっとしたことを気軽に書き込める “分報”という仕組みが、”ザツダン”の輪を広げるのに一役買っています。

サイボウズのkintone内にある「分報」スペース。Twitterのような感覚で、業務の現状や悩み、ちょっとした思いつきや疑問、さらにはプライベートの話まで共有されている
サイボウズのkintone内にある「分報」スペース。Twitterのような感覚で、業務の現状や悩み、ちょっとした思いつきや疑問、さらにはプライベートの話まで共有されている

分報とは、業務報告として1日の仕事内容を書き込む「日報」とは違い、分刻みに更新していく、いわば社内版Twitterのような取り組みのこと。特に書き込む内容は制限しておらず、今取り組んでいる仕事のことや、ちょっとした気分の変化が思い思いにつぶやかれています。

「さて、A社向けの提案書でも作り始めるか」「住宅ローン減税の手続き、年末調整でどう処理するんだろ?」といった仕事に関することから、「PCのファンの音が部屋中に響いてます、ちょっと気になる」「Uber Eatsでランチ検索中、今日は何頼もうかな」といった何気ない一言まで、書き込まれている内容はさまざまです。 

分報で日常的にコミュニケーション量を増やしていくことによって、メンバーの考えや特性がいろいろな角度から理解できるだけでなく、雑談のタネも自然と増え、ハイブリッドワークでも密に関係を築くことができるのです。

おわりに

ハイブリッドワークによって、メンバーの悩みに寄り添ってチーム全体をまとめていきながら生産性を高めていくためには、これまでとは違うマネジメントのアプローチが必要です。この記事では3つの視点をご紹介しました。

  • ハイブリッドワークにおける生産性向上の鍵は“情報格差”の解消にある
  • “途中経過”を見えるようにすることがメンバーの不安解消に効果的
  • ハイブリッドワークで強いチームを作る“雑談”の重要性

こうしてオンラインファーストを念頭に働く環境を整えていくことが、ハイブリッドワーク成功の鍵となることでしょう。

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